ご機嫌いかがですか?
前回から開始した『昭和生まれが忘れられないシリーズ』。
今回は「洋楽ベスト10」を取り上げ、第1回目として、ジョン・レノンの『(Just Like) Starting Over』(日本語タイトル:スターティング・オーヴァー)について書いてみたいと思います。
鬱々としていた青い日々
「青春」という言葉からは、前途洋々で明るいイメージが浮かんでくるんでしょうね。
引き換え、20歳前後だった頃の僕には、惨憺たる記憶しかありません。
無気力でその日暮らし。
将来の展望を夢にも描けていなかった。
なにしろ、金がなかった。
所謂、「私の人生〜暗かった〜♫」というやつです。
場末の演歌かアングラフォークの世界、といいたいところですが、そんなにカッコいいものではありません。
反対を押し切っての上京だったので、親からの仕送りはありませんでした。
生活費をすべてバイトで稼ぐ日々。
次第に大学からは足が遠のいて単位が取れず、さてどうするか、みたいな時期した。
明日をどうやって食いつなぐか、だけを思って生きていました。
現在のように、消費者金融の無人機から簡単に借金ができる時代だったら、とうに破綻していたような気がしてなりません。
FENから流れてきたショッキングな言葉
狛江市という東京の端っこのアパートに住んでいました。
そこは何も特徴がないような街でしたが、FENの電波は良く入りました。
テレビも電話もなく、日当たりの悪い四畳半で、ラジカセのFENから流れる音楽を聴く毎日。
そんな鬱々としていたある日、何時頃だったかはよく覚えていないのですが、FENからジョン・レノンの曲が流れてきました。
その後、ジョン・レノンは何曲も続いたのです。
何だろう、特集なのかな、と気になってDJ(ディスクジョッキー)の話に耳をそばだてました。
” John Lenon is died. “
それが病気や自死ではなく、射殺されたということがあまりにもショックでした。
1980年12月9日(NY現地は12月8日)のことです。
当時の僕の境遇など、今思うと取るに足りないものですよ。
でも、この出来事とあわせて、何だか世界の終わりを感じてしまったものです。
ジョン・レノンが最後に残した明日への希望
ジョン・レノンの名曲はあまりにも多く、どれをとっても個性的です。
このときにFENから流れてきた中で、つい最近聴いたばかりだな、という曲がありました。
その曲が『(Just Like) Starting Over』。日本語タイトルは『スターティング・オーヴァー』。
その数ヶ月前に発売されたアルバム『ダブル・ファンタジー』の一曲目として収められていました。
一人の人間として、素直な気持ちを歌った傑作
発売された当時、久しぶりに惚れ惚れするようなロックンロールが感じられて、ワクワクしました。
50年代を彷彿とさせる懐かしいサウンドが、心の奥底に染み渡ります。
イントロの鐘の音は、まるで新しい人生の始まりを告げているようで、思わずドキッとします。
ジョン・レノンが、過去の自分を乗り越えて、新しい自分としての一歩を踏み出した証なんだと思います。
そんな矢先の出来事だったんですよ。
皮肉にも、これがジョン・レノン生前最後のシングルカット曲となってしまいました。
「もう一度、ゼロからやり直そうぜ!」って、自分に言い聞かせてるみたいにも聞こえることが物悲しい。
亡くなってから、この曲を何度も聴きました。
聴くたびになんだか勇気が湧いてきて、「よし、俺も明日から頑張ろう!」って思えたんです。
ジョン・レノンはこの曲で、「人生に遅すぎるスタートなんてないんだぜ」って教えてくれたような気もします。
今でこそあまりなくなってきましたが、「誰かに背中をそっと押して欲しい」ときには、この曲を聴き返していたものです。
