ご機嫌いかがですか?
自分自身が前期高齢者になり、とても気になっているニュースのひとつが、高齢ドライバーによる交通事故です。特に、アクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走事故は、決して他人事ではありません。

運転に自信があるという人ほど過信しやすいらしい。
高齢者人口と比例して増えるドライバーの増加
大切な家族や友人が、あるいは自分自身が、いつ被害者や加害者になるかもしれない。
これって、どうすれば防げるんでしょうか。
警察庁によると、現在の日本における70歳以上の自動車運転免許保有者は約1,362万人(2023年時点)で、その数は年々増加しているということです。
政府や警察は、『サポカー(安全運転サポート車)』の普及促進や、免許更新時の高齢者講習の厳格化など、さまざまな対策を講じていますが、事故は後を絶ちません。
踏み間違い事故の多くが、オートマ車で起きている現実
高齢ドライバーによる事故のうち、最も多い原因の一つがアクセルとブレーキの踏み間違いだということです。
多くの事故現場で、ドライバーが「ブレーキを踏んだつもりだった」と証言しています。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
根底にあるのは、圧倒的なオートマ車の普及
オートマチック車(以下、AT車と表記)は、クラッチ操作が不要で、ギアチェンジも自動で行われるため、運転操作が非常に簡単です。
この手軽さから現在では多くの人がAT車を選び、免許もAT車限定で取得しています。
しかし、その手軽さが、特に高齢者にとっては踏み間違い事故の温床になっている側面も否定できません。
AT車は、アクセルを踏まなくてもクリープ現象によって低速で前進するため、ブレーキペダルを踏んでいる時間が長くなりがちです。
また、急いでいる時や、パニックに陥った時、人間は無意識に最も強く踏み込む動作をします。
その結果、ブレーキを踏むべき時に、咄嗟にアクセルを踏み込んでしまうという悲劇が起こりやすくなるのです。
マニュアル車がもたらす「運転の意識化」というメリット
そこで一つの解決策として、高齢ドライバーのマニュアル車(以下、MT車と表記)への移行を提案します。



今さらマニュアルなんて…
そうですね、そう感じられる方も多いでしょう。
しかし、MT車には、AT車では得られない事故防止のメリットがあります。
MT車は、発進、加速、減速、停止のたびに、クラッチとシフトレバーを操作する必要があります。
この一連の動作は、脳の複数の領域を同時に使う複雑なタスクです。
MT車の運転が事故防止につながる理由
無意識の暴走を防ぐ
AT車の場合、ブレーキとアクセルという二つのペダルしか操作しません。
しかし、MT車はクラッチというもう一つの重要なペダルがあります。


もしアクセルとブレーキを踏み間違えても、クラッチ操作を怠ればエンストします。
「エンスト」という物理的な現象が、暴走を未然に防ぐ最後の砦となります。
運転への意識を高める
MT車を運転する際は、常にクラッチやギアの操作を意識しなければなりません。
「意識的に運転する」という行為が、漫然運転やぼんやり運転を防ぎ、ドライバーの集中力を高めます。
脳の活性化
クラッチ、シフト、アクセル、ブレーキを同時に使う複雑な操作は、脳の複数の機能を活性化させます。
これは、加齢による認知機能の低下を緩やかにする効果も期待できます。
AT車が「手軽さ」を追求した結果、運転操作が単純化され、かえって無意識の踏み間違いを招いているとすれば、MT車という「少し手間のかかる」運転方法に立ち戻ることは、事故を減らすための有効な手段となり得るのではないでしょうか。
高齢者向けに「MT車限定免許」を導入するという提案
これらのメリットを踏まえ、一つの大胆な提案をしたいと思います。
75歳以上は、マニュアル車限定免許でしか運転できないようにする
これは決して、高齢者から運転の自由を奪うための提案ではありません。
むしろ高齢者自身が安全に、そして安心して運転を続けられるための新しい仕組み作りです。
「75歳」という年齢はあくまで一つの目安ですが、この年齢に達したドライバーには、AT車からMT車への切り替えを義務付けるというものです。
もちろん、現実的な課題も山積しています。
MT車の確保
日本におけるMT車の販売台数は年々減少しており、中古市場でもAT車に比べて数が少ないのが現状です。(現在のMT車登録台数の比率は2%)
ちなみに、ヨーロッパでのMT車比率は30%程度らしいです。
高齢者のMT車操作能力
若い頃からAT車に慣れ親しんだドライバーが、MT車をスムーズに運転できるかという問題もあります。
しかし、これらの課題を乗り越えることで、得られるメリットは計り知れません。
例えば、MT車の教習を義務付ける代わりに、高齢者向けの教習プログラムを充実させる。
また、自治体と協力して、高齢ドライバーがMT車を安価に購入、あるいはレンタルできるような支援制度を設ける。
このような社会全体での取り組みを通じて、高齢ドライバーがMT車にスムーズに移行できる環境を整えていくことも重要です。
「最後の車」として購入したのはMT車
前回のブログで、前期高齢者としての「最後の車」としてジムニーを購入した記事を書きましたが、選んだのはMT車です。


ジムニーには、新車としては数少ないMT車仕様(5MT)が用意されていて、今後のことを考えて購入しました。
ある程度の年齢になってもMT車を運転できるレベルであれば、少しでも事故の不安を減らせるのではと考えた結果です。
逆に言えば、MT車を操れなくなった時点で、免許は返納するつもりです。
運転の「自由」と「責任」を考える
世間では高齢者に対して免許の自主返納を促す圧力が強まっています。
でも、私たちの社会は、運転を続ける「自由」を尊重すべきです。
その自由には、事故を起こさないという「責任」が伴います。
この提案は、高齢者から運転の自由を奪うのではなく、その責任を全うするための新しい選択肢を提示するものです。
「運転は、誰でもできる簡単なこと」という意識から、「運転は、集中力と注意力を要する、責任ある行為」という意識へと、社会全体で変わっていくことが、未来の事故を減らすための第一歩となるでしょう。
運転することは楽しいという感覚
MT車への移行は、運転の楽しさを再認識するきっかけにもなり得ます。
エンジン音を聞きながら、自分でギアを操り、車と一体になる感覚。
それは、AT車では味わえない、運転本来の醍醐味です。


将来的には『自動運転』の時代が来るのでしょう。
しかし、それを待っているだけでは、高齢ドライバーの事故をゼロにすることは難しいかもしれません。
まとめ
- 高齢ドライバーによる踏み間違い事故の多くが、AT車の安易な操作によって引き起こされている可能性がある。
- MT車の運転は、クラッチとシフト操作により「運転の意識化」を促し、無意識の暴走を防ぐ効果が期待できる。
- 75歳以上を対象とした「マニュアル車限定免許」の導入は、高齢ドライバーの事故防止に有効な大胆な施策となり得る。
- これは高齢者から運転の自由を奪うものではなく、安全に運転を続けられるための新しい選択肢を提示するもの。
この提案が、今後の社会議論の一助となることを願っています。